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子ども食堂

 

“子ども食堂”の活動が、全国に広がっています。

 

子ども食堂とは、子どもやその親、地域の人々に、無料または安価でおいしい食事や温かい団らんを提供する社会活動。

 現在社会的な問題となっている“孤食”を解決するため、また地域のコミュニティづくりのための有効的な手段として、その注目度は高まるいっぽうです。

  

 葉山でも「こどもの食卓」という名で、子ども食堂の理念をもとにした活動がスタートしています。主催は「はやま食卓プロジェクト実行委員会」。年に数回、葉山の各地域を回って移動食堂を開いています。食材の提供や、当日の調理のお手伝いなど、協力者も少しずつ増え、活動も軌道に乗ってきました。

 

対象は小学生以上の子どもたち。事前予約制で、必ず大人が送迎することがルールです(送迎後、大人は帰宅。子どもだけの食卓となります)。参加費は、高校生までなら一人100円。お小遣いでも来れそうな価格に設定されています。

 

 まだ寒さも厳しい1月の終わり、今年最初の「こどもの食卓」が、長柄の「葉山ファクトリー」内「葉山キッチン」で開催されました。この日は平日。子どもたちが学校から帰宅後に来られるよう、17時~18時半と18時半~20時の2回の会が設定されていました。17時過ぎにお邪魔すると、すでに暗闇迫る中、寒さに負けず、外で元気に走り回る子どもたちに出迎えられました。ごはんの前に、広い葉山ファクトリーの庭で遊んでいたのでしょうか。

  

 キッチンに入ると、エプロン・三角巾・マスクを着けた十数人の女性が、調理に、子供たちの相手に、と、忙しく働いています。多くは子どもを持つ若いお母さんとのこと。一人で来ている子どもが寂しがるから、自分の子供を連れてくることは禁止。誰かに預けてボランティアに来ているのです。

 

 キッチンの脇に置かれた二つの大きな丸いテーブルに目を向けると……いました、いました。賑やかに食事をする子どもたちが。今回は男の子と女の子、二つのテーブルにはっきり分かれて座っていました。参加者の多くは小学中学年~高学年。そろそろ男女で分かれてしまうお年頃なのかもしれません。

男子グループの中には、中心になって盛り上げている子どもがおり、話を聞くと、もう何回も来ているそう。今日は学校の友だちを数人誘って来たとのこと。自分から積極的に参加しているところを見ると、子どもたちにとっては楽しいイベントといったところなのでしょう。

 もちろん、そんな子どもだけではありません。中には食事をしながらポロリと涙をこぼす子も。初めての場所、しかも知らない人ばかりで寂しくなってしまったのかな。。。でも、大丈夫。さっそくお手伝いのお母さん方が声をかけて、相手をしてあげていました。

 

 気になる今日のメニューは、葉山野菜がたっぷりと入った豚汁におにぎり、おいも、BBQチキン、大根&季節の野菜の添え物、果物などなど(庭では、窯焼きピザも提供!)。食材は葉山産が中心です。そんなに贅沢なものを使っているわけではないけれど、お母さん方によっていろどりも美しく盛り付けられたプレートは、なんだか特別なごちそうといった感じ。野菜が主役のプレート。偏食の子もいるのでは? という考えが、一瞬よぎりましたが、まったくの取り越し苦労でした。農家の提供による野菜の新鮮さのせいか、素材を生かしたお母さんたちの調理のせいか、はたまたみんなで食べる楽しい食卓のせいか……みんな、おいしい、おいしい! と文字どおりぺろりと平らげていましたよ。

 

  ところで、協力しているのはお母さん方だけではありません。活動を聞きつけたさまざまな職種の人が毎回、お手伝いに駆けつけています。

  映像クリエイターの通称・前田屋さんはすでに常連。自分で作ったピザ窯でピザを焼くのが趣味で、葉山ファクトリーにも自作の窯が置かれています。この日は、子どもたちにピザを成形させ、さらにそれを目の前で焼いて見せていました。「ピザって身近な食べ物のようでいて、どんなふうにつくられるのか知らない子が意外と多い。みんな興味津々で、焼き上がるまで炎の中をじーっと見つめてますよ」と、前田さん。ピザを使った楽しい食育ですね。 

その前田屋さんを手伝っていたのが、玉蔵院・副住職の本多さん。活動に共感し、自分から協力を申し出たとのこと。玉蔵院の敷地を開放することもあるそうです。「もともと子どもが大好き」「町の人が笑顔でいられるように少しでも貢献できれば、と思っている」など、若々しいキラキラした笑顔で語ってくれました。

   ピザ窯の隣では「風早橋ガーデングリルカフェ」の高橋さんが、もくもくの煙の中、BBQチキンを焼いていました。子どもたちからは“とりのおじさん”と呼ばれているそう。前田屋さんと同じく何度も参加している常連さんです。「子どもたちを見てるのが楽しいんですよ。毎回、知らない同士が集まるでしょ。最初はもじもじしてても、だんだんうちとけて遊び出す。必ずリーダーみたいな子が出てきたりして。子どもって本当にたくましいな、と感心します」

 今回初参加は、葉山小学校の吉田先生。もともと子ども食堂の活動に興味があり、ご父兄がお手伝いしているというのを耳にして一緒に連れてきてもらったとのこと。教え子も多く参加していたらしく、はじめから引っ張りだこ。お母さん方からも「今日は先生に子どもたちを見てもらえるから、助かります」と頼られていました。子どもたちとわいわい遊びながら、挨拶などはしっかり指導する。見事な先生ぶりを発揮していました。

  ほかにも保育園の保母さんや歯科医、消防団の方々……さまざまな人がかかわっている「こどもの食卓」。気がついたのは、子どもだけではなく手伝っている大人も楽しそうなところ。その理由は、みんな子どもが大好きだということばかりではないようです。お母さん方の一人はこんなふうに話してくれました。

  「子どものコミュニティはもちろん、親のコミュニティづくりにも役立っているのかな、と思います。私もここで知り合いがたくさんできました。葉山のお母さんたちは意識もポテンシャルも高い人が多いので刺激になりますよ。毎回、元気になって帰れます」

  

 さて、おいしいものをみんなで食べて、いっぱい遊んで、歯磨きの講習も受けて……1時間半はあっという間。お迎えの方も三々五々集まってきました。こちらもみんな笑顔。束の間自由な時間がとれて、英気を養えたようです。

「子どもだけでなく、働きながら子育てをするお母さんたちも応援していきたい。そんな気持ちで取り組んでいます」と言うのは、実行委員長の清水明絵さん。

 子どもも親も、お手伝いの人たちも、幸せな時間を共有する。そんな時間を、輪を広げていけば、多くの問題をみんなで解決したり、未然に防ぐことにもつながるかもしれません。食卓に集まれば、みんな家族。実際、その空間は、とてもアットホームで和やかな雰囲気に包まれていました。 

  「こどもの食卓」、今後は食育・農業体験なども企画しながら続けていきたいとのこと。

 

食べることは、生きる根源。食卓を囲んだまちづくりが、今、少しずつ動きはじめています。