· 

第1回「まちづくりと環境保全」勉強会 報告

葉山まちづくり協会主催 第1 回「まちづくりと環境保全」勉強会 報告

■テーマ:まちづくり条例の課題と展望

■講師:伊藤泰志 富士通エフ・アイ・ピー株式会社 環境・科学システム部課長

■コーディネータ:田中章 東京都市大学環境学部教授

■日時:平成26 年7 月26 日(土) 14:00~16:00

■場所:葉山町立図書館2 階ホール

 葉山町など湘南地方は、都心に比較的近いエリアでありながら山・川・海という豊かな自然に恵まれている一方で、都心からのスプロール化の最前線であり開発と保全のせめぎあいの場所でもある。自然環境保全は行政体の大小に関わらず取り組むべき重大課題であるが、それを標榜している湘南地域ではなおさらである。ところが、まちづくりや自然環境保全の仕組みは一般市民には縁遠く、わかりにくい。このような背景から、この分野の専門家である東京都市大学の田中章教授の協力を得て、葉山まちづくり協会は「まちづくりと環境保全」をテーマとする市民勉強会の第1回を開催することとなった。第1回は、富士通エフ・アイ・ピーの伊藤泰志氏より、隣接する逗子市で1992年から施行されている「逗子市の良好な都市環境をつくる条例」の概要とその自然環境保全に対する成果についてご紹介いただいた。

 本条例は、逗子市全域を10m×10m という詳細なメッシュに区分し、A~D ランクの4 段階の環境保全機能評価をメッシュ毎に行いランク付けした。300m2 規模以上の開発事業は届け出制になっており、市民への情報開示と市民参加の仕組みを含んだ手続きを通して、A ランクのメッシュでは80%、B ランクでは60%、C ランクでは40%、D ランクでは20%の緑地を事業者の責任で維持・確保する仕組みである。この条例には2つの大きな特徴がある。それは、市民への情報開示と市民参加を含む「環境アセスメント」制度であること、最近、ようやく日本でも議論がなされ始めた「生物多様性オフセット」制度でもあることである。生物多様性オフセット(代償ミティゲーション)とは、開発により失われる自然と同等な自然を事業者の責任で近隣に復元・創造・維持などにより確保する仕組みであり、先進国では日本だけが法制化していなかったが、生物多様性条約第10 回締約国会議が愛知県で開催されて以降、国、環境省レベルでも議論が活発化している。

 参加者全員での意見交換会では活発な質疑応答が行われ、30 分の意見交換会は1 時間に延長。意見交換は、逗子市のまちづくり条例と葉山町のまちづくり条例の相違についての質問から始まった。そこで前述の2つの特徴が明らかにされた。また、行政職員や議員やこの地域に在住する専門家などに対して積極的に参加を呼びかける必要があること、NPO 法人葉山まちづくり協会あるいはこの勉強会として行政に提案していく必要があることなどの意見も出た。一方、開発規制や自然保護制度などは土地所有者の権利(所有権)を侵害し、不公平であるとの意見も出された。同時に、個人と社会の権利の関係性、将来の世代に対する公平性なども考慮する必要があることなども議論された。最後に、「まちづくりと環境保全」というテーマに対してはそれぞれの考え方と立場があるため、今回のような多様な立場の人々による(マルチステークホルダーズ)議論を今後も続けていく必要があることを参加者全員の共通の認識として合意した。

左より伊東代表理事、伊藤泰志氏(講演者)、田中章氏(コーディネーター)、柳川理事

全体風景